

原子力への不安感については「不安」と「なんとなく不安」を合計すると七割に近い六八%となっている。
この「不安」は推進派でも高く五七%を占めた。
問題はこの数字の流れの方にある。
同様な調査が八七年と九〇年に行われており、質問に多少の違いはあるのだが、推進が約五七%、約四九%、そして今回の約凹三%。
その一方、反対が約六%、約三%と増え続け、今回は約二二%という急増ぶり。
調査は九九年三月に全国成人男女一千人を対象に行われたものであり、「もんじゅ事故」の後遺症が回復していないことをうかがわせる。
電力業界が「当然」とするのは、原子力事故の影響の大きさを今更ながら認めざるを得ないからであり、「残念」とするのは、動き出したプルサーマルなどの新しい局面への評価がほとんど感じられなかったからに違いない。
確かに目下、日本の原子力問題は踊り場にあるように思える。
言い換えれば問題点の整理が欠かせない状況といっていい。
日本の原子力は問題を抱えながらも着実に前進しているのは事実である。
国民の不安感とは別に、初めてのプルトニウム本格利用のためのMOX燃料はすでに国内に搬入されている。
核燃料のリサイクルということに過ぎない。
この面だけをとらえるのであれば、むしろリサイクル時代の先端をいくといってもまちがいではない。
世論調査では不安だが増設必要と冷静に答えた人が少なくない。
必要派の六割弱が不安を抑えて必要とした。
この「不安だが必要」という冷静な判断は信頼から生まれたものだろう。
折しも原油価格が急上昇、エネルギー関係者のなかにはミニ石油危機、あるいは第三次石油危機という声さえあり、その動向に懸念が強まっている。
新しい局面を迎える日本の原子力問題がこの危機という状況で動き出した意味は軽くない。
日本の原子力が解決を迫られている問題は再処理工場問題、高レベル廃棄物処理問題など少なくないが、緊急課題としては使用済み燃料の中間貯蔵問題がある。
プルサーマルが動き出した一方では、その中間段階が大きな問題になってきている。
原子力発電所から出る使用済み核燃料は国内にはその全量を再処理する能力がまだなく、これまで一部、英仏の再処理工場に委託、一部は東海再処理工場に、残るは各原子力発電所などで貯蔵してきた。
動き出すプルサーマルの燃料、MOXはこの委託再処理から作られたもの。
ところがこの海外委託は九八年で終了、本来であれば青森県六ケ所村に建設中の再処理工場などが対応するはずだったのだが、計画変更もあり遅れ、この再処理工場が予定通りに二〇〇五年に稼働しても年間処理は約八百トン止まりだ。
ところが使用済み核燃料はすでに囲内に約六千四百トン、現在は約七千トンあるとされている。
これを目下は各原子力発電所内にある貯蔵施設に貯蔵しているが、これらの総貯蔵可能容量は一万二千トン程度である。
当面問題はないが、使用済み燃料は当面年間約九百トン、これが二〇一〇年ごろには年間約千四百トン、さらに二〇三〇年ごろには同千九百トンというべースで増加していくことが予想されている。
当然、現状のまま放置しておくといずれ対応できなくなることが必至だ。
それに個別原子力発電所では問題がすでに起きつつあるのが現状で、中間貯蔵が不可欠になってきている。
それも立地点決定などを考えれば緊急な課題といってよく、九九年六月に原子炉等規制法が改正され、原発敷地外にも使用済み燃料を保管することができる体制が整った。
問題は立地点の確保だ。
電力業界では五千トン規模二か所という方向で動いているとされるが、まだ、立地点は決定はしていない。
一般論としては現に原子力発電所が存在する地域が考えられるが、原発だけでもう十分という反発も少なくない。
予定では二〇〇〇年度中の立地点決定、という方針であり、原子力施設としては異例の緊急対応になってしまっている。
具体的な貯蔵方式としては現在、放射線の遮蔽や熱の除去に水を使う「プール方式」とキヤスクといわれる丈夫な容器による「キャスタ方式」があり、東京電力の場合、容量を増やすことができる「キャスタ方式」の採用を決めている。
安全性の問題はないとされるが、問題を複雑にしているのは、この問題を契機に核燃料リサイクルへの疑問が台頭しかねない点だ。
貴重な使用済み燃料を中間貯蔵でなく永久貯蔵、いわば廃棄してしまい、再処理計画もストップさせてしまおうという考えだ。
ワンススルーといわれる。
確かにひとつの考え方ではあるが、プルサーマルがようやく動き出そうとしている現時点で、無資源国・日本が二十一世紀に向けて選択する道とは到底思えない。
ただ、こうした考えの台頭の背景には遅れ遅れになっている再処理工場計画、高レベル廃棄物処理対策など原子力政策の揺れに一因があることも確かだ。
中間貯蔵問題にしても再処理計画が予定通りであれば、これほど大きな問題としてクローズアップされることもなく、原子力政策がスキを突かれた形ともいえよう。
原子力といえば事故というのが言葉の繋がりになってしまっているようにさえみえるが、原子力が日常の生活の支えになっていることは紛れもない現実だ。
反対は簡単だが、その代案なき反対は問題の解決には全くならない。
それに現実の原子力発電所には事故というマイナスの顔のほかにも、いろいろな「顔」がある。
環境への対応、地域との共生、スポーツといった面にも及んでいる。
「九七年夏」は日本の原子力にとって記憶されていい年だろう。
様々な問題を投げ掛けながらも、日本に世界一の原子力発電所が誕生したのである。
それが東京電力の柏崎刈羽原子力発電所だった。
現在、この原子力発電所には一号機から七号機までの七基の原子力が稼働しているが、七号機の稼働によってその発電能力は約八百二十一万キロワットに達し、それまで世界一だったカナダのブルース原子力発電所の七百二十八万キロワットを抜き、世界一の座に座った。
規模が世界一であることに実質的な意味はないのかもしれないが、今後の日本のエネルギー問題を考えていくうえで、象般的な意味を持っていることは否定できないだろう。
それにこの柏崎刈羽原子力発電所はその規模だけに特色があるわけでなく、六号機と七号機は「ABWR」といわれる新しいタイプの沸騰水型軽水炉でもあったことにある。
沸騰水型軽水炉を意味するBWRに「より進んだ」ということで「ADVANCED」という頭文字が付けられたこの改良型沸騰水型原子炉は日本の原子力技術の一つの成果でもあったのである。
東京電方にとって版子力導入以来のけ的に白川の技術を確立することがあり、国内メーカーとも協力してその方向を追求してきた。
「ABWR」はその到達点だった。
「ABWR」の特長はいろいろあるが、例えば高効率の大型タービンの導入もそれだ。
これだけのことで熱効率が従来のBWRより約一・一%改善された。
この一%の意味は軽くない。
原子力は技術者によると「受験でいう偏差値という話ならさしずめ偏差値を一挙に一〇以上上げたという快挙なんです」ということになる。
それに加えての特長にインターナルポンプの採川ということがある。
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